哲劇メモ

吉川浩満(@哲学の劇場)の日々の泡

ファーブル特集☆kotoba

多様性を考える言論誌『kotoba』に初登場。ファーブル『昆虫記』特集に随筆を寄稿しました。

kotoba(コトバ)2017年夏号

kotoba(コトバ)2017年夏号

超豪華執筆陣です。ご覧ください。

http://www.shueisha-int.co.jp/blog/?p=12448

『ファーブル昆虫記』というと、少年が読むものというイメージがありますが、完訳版は大人が読むべき博物学の名著です。ダーウィンの進化論に対する徹底的な反駁のほか、生物の多様性や神秘性を再発見する、驚きに満ちた内容。今回は、フランス文学者で『完訳ファーブル昆虫記』(集英社)の翻訳者・奥本大三郎さんの監修のもと、この大著を特集しました。

巻頭言では、『昆虫記』が書かれた経緯とその内容について奥本さんが解説してくださっています。

「彼はフィールドノートを取り、長い間構想を練って、昆虫そのものと、それを観察している自分という人間の心の動きを描写している。(中略)そこに数学の想い出だとか、息子の死の悲しみだとか、自分の育った南仏ルーエルグ地方の農民の生活だとか、自伝的、人間的、風土的要素を含む文章まで差し挟んでいるのである」。

そう、『ファーブル昆虫記』に綴られていることは、昆虫の話のみに留まらないのです。

パート1「ファーブルと進化論」では、生物学者・福岡伸一さんが、現在の進化論だけでは説明しきれないものが自然の中には満ち溢れていると主張。「私たちはしばしば自分が想定した仮説やモデルやメカニズムに固執し、その前提に囚われるあまり、自然のほんとうの姿を見失いがちになる」と警告されています。

パート2「ファーブルから学んだ」では、昆虫学者・丸山宗利さんが、「ファーブルと多様性」について、ご自身が研究されている昆虫分類学をもとに紹介。「「種の多様性」「生態系の多様性」「遺伝子の多様性」はいずれも生物の多様性を知るうえで重要なものであるが、『昆虫記』はすべてに関して重要な情報と示唆を含んでいる」と称えています。

パート3「ファーブルの時代」にご寄稿いただいたのは、フランス文学者の鹿島茂さん。教養こそが社会的地位を上層させるための唯一の武器とされていた19世紀は、伝統的社会から近代社会へ移行しつつあった時代です。当時のフランスの文化的・教育的背景について、鹿島さんに解説していただきました。

この他にも、ファーブルがつないだ日本のハチ学や糞虫研究、ダーウィンとファーブルの往復書簡など、偉大なる昆虫学者の知られざる一面に光を当てた読み応えのある記事がそろいました。

ぜひ書店で手に取ってご覧ください。

完訳ファーブル昆虫記 第1期 1-5巻 全10冊セット(化粧ケース入り)

完訳ファーブル昆虫記 第1期 1-5巻 全10冊セット(化粧ケース入り)

完訳ファーブル昆虫記 第2期 6-10巻 全10冊セット(化粧ケース入り)

完訳ファーブル昆虫記 第2期 6-10巻 全10冊セット(化粧ケース入り)

shinsho.shueisha.co.jp

『カタストロフ・マニア』書評☆新潮

文芸誌『新潮』に、島田雅彦さんの新作小説『カタストロフ・マニア』の書評を寄稿しました。

  • 吉川浩満「フロム・カタストロフ・ティル・ドーン――島田雅彦『カタストロフ・マニア』論」、『新潮』2017年7月号、新潮社

新潮 2017年 07 月号 [雑誌]

新潮 2017年 07 月号 [雑誌]

カタストロフ・マニア

カタストロフ・マニア

太陽のコロナ質量放出や致死性ウィルスのパンデミックによって現代文明が崩壊するパニック‐サヴァイヴァル‐サイバースペースSFリアリズム小説です。おもしろいのでぜひ読んでみてください。

上記原稿には書きませんでしたが、映画化の企画も(私の頭の中だけで)進行中です。主人公のシマダミロクは山田孝之、癒やし声の看護師の国枝さんは門脇麦、元女優の白鳥姫星は斉藤由貴、謎の中年男モロボシは塚本晋也、天才ハッカーの菊千代は濱田岳、シェルターから脱出してきた精神科医の白瀬は吹越満、というのはいかがでしょうか。

www.shinchosha.co.jp
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書評連載#18☆KOKKO

雑誌『KOKKO』での書評連載、第18回。

KOKKO 第22号

KOKKO 第22号

関連書として下記も。

グロテスクな教養 (ちくま新書(539))

グロテスクな教養 (ちくま新書(539))

教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)

教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)

バックナンバー。

  1. カフカ『ポケットマスターピース01 カフカ』
  2. アンソニー・B・アトキンソン『21世紀の不平等』
  3. スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ『チェルノブイリの祈り──未来の物語』
  4. 浅野智彦『「若者」とは誰か――アイデンティティの30年 増補新版』
  5. ジョセフ・ヒース『啓蒙思想2.0――政治・経済・生活を正気に戻すために』
  6. マレー・シャナハン『シンギュラリティ――人工知能から超知能へ』
  7. ジョシュア・グリーン『モラル・トライブズ──共存の道徳哲学へ』(上・下)
  8. 吉良智子『女性画家たちの戦争』
  9. アトゥール・ガワンデ『死すべき定め――死にゆく人に何ができるか』
  10. 高史明『レイシズムを解剖する――在日コリアンへの偏見とインターネット』
  11. 今泉忠明監修『おもしろい! 進化のふしぎ――ざんねんないきもの事典』
  12. ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』
  13. ジャック・ランシエール『無知な教師』
  14. ジョナサン・ハイト『社会はなぜ左と右にわかれるのか——対立を超えるための道徳心理学』
  15. 海野つなみ『逃げるは恥だが役に立つ』1〜
  16. ジョージ・オーウェル『一九八四年 新訳版』
  17. デサール、パーキンズ『マイクロバイオームの世界――あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち』

堀之内出版 - 公式ウェブサイト

今日の宿題☆Rethink Books

福岡の本屋さんRethink Booksの企画が本になりました。

  • 吉川浩満「今日の宿題」、Rethink Books編『今日の宿題』NUMABOOKS、2017/5

rethinkbooks.jp

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【冊子概要】
Rethink Books・編
『今日の宿題』
http://rethinkbooks.jp/news/3539

発売日:2017年5月25日(木)
定価:980円+税
判型・仕様:105×148mm、並製、670ページ
発行:NUMABOOKS
※Rethink Books(福岡・天神)、本屋B&B(東京・下北沢)にて限定発売

●本書について
320人からの、320+αの答えのない問い。

東京・下北沢に店舗を構える新刊書店「本屋B&B」が、2016年6月に福岡・天神明治通り沿いにオープンさせた、1年間限定の小さな書店「Rethink Books(リシンクブックス)」。その店内では「今日の宿題」と銘打たれた、日替わりの展示が行われていました。作家やミュージシャン、デザイナー、建築家、写真家など、さまざまなジャンルの方から「宿題」を寄せていただき、毎日1問ずつ掲示するというもの。
本書は、Rethink Books開店初日の2016年6月1日から、閉店1か月前の2017年4月30日まで、11か月の間に展示した「今日の宿題」を一冊にまとめたものです。出題者たちの日々の思索の断片が垣間見える、大小さまざまな問い。ひとつずつ、ぜひ立ち止まってじっくり考えてみてください。

●出題者(総勢320名・掲載順・敬称略)
谷川俊太郎/鹿子裕文/菅野康晴/栩木伸明/西崎憲/畑中章宏/ますむらひろし/乾久美子/カニエ・ナハ/堀江敏幸/多和田葉子/三山桂依/小沢朋子/くぼたのぞみ/平田俊子/黒川創/武田砂鉄/石川直樹/岩崎航/鞍田崇/温又柔/大橋裕之/小竹由美子/石川美南/坂本大三郎/川村元気/若松英輔/豊﨑由美/かわしまようこ/沼野充義/鴻巣友季子/アサダワタル/小林エリカ/せきしろ/三角みづ紀/最果タヒ/伊藤亜紗/角田光代/柴崎友香/服部みれい/新井卓/藤谷治/中村和恵/植本一子/田丸雅智/幅允孝/開沼博/海猫沢めろん/大野舞/岡崎祥久/片山杜秀/金原瑞人/春日武彦/栗山遼/西山敦子/近代ナリコ/小沼純一/河野通和/畠山直哉/福永信/ぱくきょんみ/岡村淳/桂川潤/木村衣有子/山本洋子/広川泰士/長谷川町蔵/柴田元幸/北村薫/三上敏視/小島ケイタニーラブ/水越伸/穂村弘/暁方ミセイ/村上慧/ミヤケマイ/林家彦いち/波戸岡景太/高山宏/大崎清夏/坂田明/高橋啓/いか文庫 店主、バイトちゃん/岡檀/大石始/稲垣えみ子/落合恵/庄野雄治/セソコマサユキ/笹公人/里見喜久夫/橋口譲二/蜂飼耳/名久井直子/金沢百枝/及川眠子/常見陽平/小田朋美/金川晋吾/田中佑典/行司千絵/西村佳哲/大塩あゆ美/旦敬介/木村友祐/藤浩志/渡辺祐/加藤千恵/辛酸なめ子/利重剛/続木順平/文月悠光/石田瑞穂/四方田犬彦/柄本佑/前康輔/山崎佳代子/星野博美/清岡智比古/福田里香/桜井鈴茂/柳原孝敦/光嶋裕介/都甲幸治/オカヤイヅミ/小山登美夫/大竹昭子/松原始/山田航/笹久保伸/石川初/桝太一/荒井裕樹/三中信宏/大串祥子/須川善行/河内卓/清田麻衣子/古屋美登里/松村貴樹/星野智幸/管啓次郎/仲俣暁生/藤野可織/伊藤俊治/柳井政和/都築響一/藤井光/小松理虔/今福龍太/若林恵/坂上秋成/山田祐一郎/ラズウェル細木/鷲尾和彦/前田ひさえ/森川すいめい/長﨑健一/白石隆義/高橋万理子/城下康明/岩尾晋作/石井勇/藤本愛/田尻久子/白水高広/濱口竜介/盛田隆二/加藤典洋/松居大悟/山本貴光/岡野雄一/大山エンリコイサム/トミヤマユキコ/菅付雅信/水野仁輔/田島朗/中村隆之/たなかれいこ/尹雄大/門内ユキエ/廣田周作/西田善太/伊藤康/小林康夫/猪谷千香/アラタ・クールハンド/山崎阿弥/小田島等/山崎広太/若菜晃子/福田尚代/森元庸介/岡本仁/大原大次郎/姜信子/渡辺康啓/小林英治/平松洋子/奥田泰正/鈴村和成/溝口彰子/ジェフリー・アングルス/吉川浩満/仲野麻紀/笠間直穂子/西山雅子/岩渕貞哉/牟田都子/中村秀一/後藤繁雄/白井明大/當麻妙/松村洋/菊竹寛/川内有緒/高野秀行/島本理生/長崎訓子/山崎ナオコーラ/大來尚順/おおしまゆたか/村上淳志/トシバウロン/岡田利規/遠山正道/白石正明/徳谷柿次郎/ドリアン助川/高松徳雄/キタキュウマン/大西隆介/usao/後藤由紀子/小西利行/牧野伊三夫/末井昭/清政光博/星葡萄/寺本愛/星野概念/岡本啓/まりこふん/佐藤亜沙美/高橋宗正/角田陽一郎/指出一正/米光一成/川口瞬/小野裕之/山口洋佑 /坂口光一/EE男 山口たかし/EE男 やっしー/土居上野 上野聖和/土居上野 土居祥平/おりがみ 山下正行/おりがみ 入江真潮/金承福/衿沢世衣子/辻本力/枡野浩一/青木耕平/柳澤健/上野昌人/戸塚泰雄/藤原康二/山元伸子/石原顕三郎/長畑宏明/鈴木美波/服部真里子/榎本正樹/柳美里/朝岡英輔/いしいしんじ/柴那典/谷口愛/田中開/古川誠/龍國竣/三砂ちづる/天野健太郎/安田登/高木崇雄/熊谷新子/染野太朗/岸本佐知子/釈徹宗/こやま淳子/繁延あづさ/國分功一郎/佐藤由美子/山本ゆりこ/平田裕美子/宮原律華/越川芳明/ボギー/モンドくん/大木雄高/河野理子/牧忠峰/山崎瑞穂/古川日出男/葉石かおり/大久保友里香/山内明美/新城カズマ/東直子/上杉野枝/中野由紀昌/木村草太/松井亜衣/小江秀明/森田真規/田中結/長谷川一/西山友美/津田直/吉増剛造

人文的#13☆ゲンロンβ14

電子批評誌『ゲンロンβ』連載中の対談書評、第13回(c/w 山本貴光 id:yakumoizuru )。

  • 山本貴光吉川浩満「人文的、あまりに人文的 #13」(書評)、『ゲンロンβ14』ゲンロン、2017/5

genron-tomonokai.com

勉強の哲学 来たるべきバカのために

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なお、『ゲンロンβ』は非会員でも単品購入可能です。540円!