哲劇メモ

吉川浩満(@哲学の劇場)の日々の泡

鎧よ

まさか今日、あんなところで君に会えるとはね。
本当に夢にも思わなかったよ。

そういえば、つい先日この日記で君の話をしたばかりなんだ。忙しいところわるいけれど、ちょっと読んでくれないか。

文字どおり、君と夢の話さ。

この駄文を読んで、わざわざテキサスから君に会いにきた人もいるんだよ。
テキサスって知ってるかい? アメリカだ。新しい大きな国さ。
生粋の中世ヨーロッパ人たる君はまだ知らないのかもしれないね。
ともかく、君のいない珈琲西武で彼女と僕はお茶を飲んだんだ。

いつのころからか西武からいなくなってしまった君。
いないとわかっていながら、それでも僕は通いつづけた。
むなしい試みだとわかっていながらね。

そして今日、西武への道すがら、僕は立ちすくんでしまった。
光ってみえるもの、あれは。(*)
そう、あれは小さなお店の軒先で座っている君の姿だった。

こんなところでさぼっていて大丈夫なのかい?
西武から目と鼻の先じゃないか。

それとも具合でもわるいのかい?
椅子に座ってじっとしているんだもんな。

ただ日なたで一服しているだけなのかい?
それだといいのだけれど。

ひょっとして、これは新しい仕事なのかい?
まさか、売られてきたわけではあるまいね?

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君の口は鋼のように固く閉ざされたままだ。
あいかわらず無口なんだな。

うん、無理して答えることはない。
鎧にはそれぞれ事情があるんだもんな。

エニウェイ、無事とわかってほっとしたよ。
鎧の君よ、また会う日まで。