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哲劇メモ

吉川浩満(@哲学の劇場)の日々の泡

魂を揺さぶるドラマ (1)

卓球 随想

第二の卓球人生がはじまったのは2006年の夏。ひょんなことから十数年ぶりに再開したのだった。あれから4年、ほんとうにいろいろあった。今日は、初めて地元の体育館に顔を出してみたときのことを書こう。

犬の散歩中に、近所の小学校で人びとが卓球をしているのを知った。季節は初夏。熱に弱い犬のために、日が暮れてから家を出た。野川のほとりを少し歩き、廃校になった小学校の、小さな体育館の横を過ぎる。

明かりがともっている。運動場を横切って入口に近づくと、ピンポンという音が聴こえてくるじゃないか。耳を澄まして聴いてみると、なかなか達者な人もなかにはいる。音がバラバラしていない。リズミカルに整っている。聴けばわかる。

興味にかられて遮光カーテン(学校の体育館にある例のやつ)をめくると、はたして人びとが卓球の練習をしていたのであった。全部で20人以上はいるんじゃなかろうか。すごい人数だ。

不思議な光景である。夜になると気味がわるいくらいに静まりかえる野川のほとり、そこにたたずむ廃校が妖しげな光をぼうっと放つ。これでも十分に風情があると思うのだが、それだけじゃない。

扉を開けると、まばゆいばかりのハロゲン灯の下、善男善女たちがひしめき合い、汗を流しながら熱心に卓球の練習をしているのである。まことにシュルレアリスムとは、こんな光景のためにある言葉じゃなかろうか。

圧倒されてしまった。愛犬マとともに立ち尽くしていると、おじさんが練習を中断してやってきた。タオルで汗をぬぐいながら、「興味あるの?」とか聞いてくる。とても軽快でフレンドリーな感じだ。

後頭部は少し薄いが、それを隠すことなく、きれいに髪を整えている。口元には立派な髭をたくわえていて、妙に雰囲気のあるおじさんだ。なんだか社長っぽい。それも大企業じゃなく、独力で小さな事業を営んでいる感じ。

聞くと、週3回も練習をしているらしい。なんでも地域の卓球愛好家が集まるクラブで、会員は総勢50人超、試合なんかにも出たりするらしい。試合かあ。20年ちかく出ていない。ちょっと楽しいかもしれない。

おじさんの誘いに乗って、次の練習日に顔を出してみることにした。

(※時間切れ。次回につづく)

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卓球社長 (ビッグコミックス)

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