哲劇メモ

吉川浩満(@哲学の劇場)の日々の泡

解説☆多田富雄コレクション

世界的免疫学者にして能作者、詩人、そして珠玉の随筆を残した多田富雄(1934-2010)のテーマ別著作集が、藤原書店より刊行開始。光栄にも第1巻に解説を寄稿しました。2017/4/26発売。

  • 吉川浩満「解説」、『多田富雄コレクション 第1巻 自己とは何か〔免疫と生命〕』藤原書店、2017/4

多田富雄コレクション(全5巻)

第1巻 自己とは何か 免疫と生命
[解説]中村桂子吉川浩満
(2017年4月刊行予定)
第2巻 生の歓び 食・美・旅
[解説]池内紀・橋本麻里
(2017年6月刊行予定)
第3巻 人間の復権 リハビリと医療
[解説]立岩真也六車由実
(2017年8月刊行予定)
第4巻 死者との対話 能の現代性
[解説]赤坂真理いとうせいこう
(2017年10月刊行予定)
第5巻 寛容と希望 未来へのメッセージ
[解説]最相葉月養老孟司
(2017年12月刊行予定)

[推薦]
石牟礼道子梅若玄祥中村桂子
永田和宏福岡伸一松岡正剛養老孟司

《体裁》
四六上製
平均各300頁・各巻口絵2~4頁
定価=各予本体2800円+税
2017年4月発刊(隔月刊)
◎各巻300ページ程度。約20年にわたって書かれた随筆・論考から精選した。
◎著者のこれまでの単行本は、多岐にわたるテーマの論考を発表時期ごとにまとめたものが多かったが、あらためてテーマ別に構成し直し、著者の執筆活動の全体像とその展開を、わかりやすく示す。
◎各巻のテーマにふさわしい解説を附し、著者の仕事を、来るべき読者に向けて新鮮な視点から紹介する。


■刊行にあたって
 免疫学の世界的第一線の研究者として、常に「非自己」を取り込みながら「自己」の定義を更新し続ける「免疫」の仕組みの本質(スーパーシステム)を看破し、そこから「人間とは何か」「生命とは何か」という普遍的な問いに踏み出すことで、自然科学・人文科学を問わず多くの読者に影響を与えた多田富雄(1934-2010)。
 2001年に脳梗塞に倒れ半身不随と構音・嚥下障害を負ったことで、研究の現場を離れながらも、新作能・詩・随筆の執筆にさらなる力を注ぎ、リハビリテーション切り捨てに対する闘争、そして「自然科学とリベラルアーツを統合する会」(INSLA)の設立など、従来以上に精力的に活動を展開した多田富雄は、倒れたことで何をつかみ、いかなる未来を見据えていたのか。
 自然科学と人文・芸術の統合を体現するとともに、脳梗塞という転換点を機に「生きること」の認識を更に深化させ、最晩年にいたるまで自らの問いを追究し続けた多田富雄の遺した文章を精選し、全5巻においてお届けする。
編集部

解説の寄稿は昨年末のドーキンス『進化とはなにか――ドーキンス博士の特別講義』文庫版に続き2本目。偉い人の作品ばかりでびびります。