哲劇メモ

吉川浩満(@哲学の劇場)の日々の泡

池内紀、若林恵『カフカ事典』

カフカ事典

カフカ事典

本格的な「事典」というよりは、池内氏のエッセイと若林氏の解説がいっしょになった「読本」風のもの。気楽に読める。こんな夜中(明け方か)にはぴったりの本。

カフカは生前、七冊の本を出している。どれもごく薄っぺらなものではあれ、出すにあたり、表紙や扉や本文の組み方について、あれこれ注文をつけた。カフカの要求に対して版元が色よい返事をしなかったとき、ほかの出版社をほのめかしたりしたし、売れ行きのためといわれると、気の進まないことでも承知した。本になるとよろこび、書評を気にかけ、本屋に立ち寄って、何くわぬ顔で自分の本を買ったりした。
――「カフカ文学をめぐる十二章――本づくり」の項

たのしい。

右は、田端に住んでいたころに谷根千(*)あたりの雑貨店で購入したカフカのマグカップ(クリックすると大きな写真をご覧になれます)。そのお店でこれを見つけたとき、ぼくが検分していると店主と従業員がチラチラこちらを見ている(母娘だったように思うが違うかもしれない)。顔になんか変なものでもついているのかなとか、ちょっと不安になりながらマグカップをレジに持っていくと、ふたりは「やった!」とばかりにおおよろこびであった。なんでも、プラハで見つけて持って帰ってきたものだそうで、だれがいつ買ってくれるのかと楽しみにしていたとのこと。いまでもお店あるかな。