岡田尊司『パーソナリティ障害』
パーソナリティ障害―いかに接し、どう克服するか (PHP新書)
- 作者: 岡田尊司
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2004/06
- メディア: 新書
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概要
「パーソナリティ障害(人格障害)」の解説と、その克服・援助のためのアドヴァイス。
感慨
同じ著者による『人格障害の時代』(平凡社新書)はいつか読もうと買っておいたのだが、相棒(八雲出)の日記を読んでこちらのほうがおもしろそうだと思い(「自己診断シート」ついてるし)、さっそく読んでみた。
パーソナリティ障害は、一言でいえば、偏った考え方や行動パターンのため、家庭生活や社会生活に支障をきたした状態といえる。(p.30)
わるかったな。で、そのパーソナリティ障害には以下の10タイプがある(DSM-V)。
- Ⅰ回避性
- Ⅱ依存性
- Ⅲ強迫性
- Ⅳ妄想性
- Ⅴシゾイド
- Ⅵ失調型
- Ⅶ演技性
- Ⅷ自己愛性
- Ⅸ境界性
- Ⅹ反社会性
「自己診断シート」に――「自己分析」の不毛性に思いをはせつつも――チェックを入れていったら……基準値をクリアしてしまったタイプが3つもあるじゃないか!(おーい)
Ⅲ強迫性
自分の流儀や自分の仕事に、細かすぎるほどにこだわり、そのこだわりや基準を周囲の者にも押しつけたり、求めてしまうのだ。他の価値観や流儀のよい点を認めるのが苦手なのである。周囲はとても不自由に感じ、のびのびできなくなる。時には、周囲から融通の利かない石部金吉として煙たがられ、孤立してしまうこともある。(p.268)
わるかったな(再)。しかし「石部金吉」て...
Ⅳ妄想性
心の中を打ち明けるような関係になったら最後、こじれたときに怖いのが、この妄想性パーソナリティ障害である。もし彼から、経済的な利益を得ていたりすれば、間違いなく、すべての返還を要求されるだろう。恐らくそれだけではすまない。彼はあなたのものを根こそぎ奪い取ろうとするだろう。訴訟は避けられないかもしれない。(p.186)
ということだそうです。>みなさん(とくにわが相棒およびYくん)
Ⅶ演技性
絶えず他者を魅了するが、ことに異性を魅了することに熱心である。それは、魅了するために魅了するだけであり、愛することとはほとんど無関係な行為である。相手をうっとりさせ、心を射止め、素敵な一晩を過ごせば、それでショーは完結するのだ。演技性パーソナリティの人は、頭の先から足の先まで、性的な存在である。常に誘惑し、魅了し続けることによって、自分の価値を証明しなければならない。(中略)何かの弾みで結婚することもあるが、やがて自分の間違いに気づく。このタイプの人は、次々と新しい観客を、魅了する必要があるのだ。それを禁じられると、すっかり元気がなくなってしまうのである。性的に誘惑するわけにはいかない同性の友人との関係は、とかく表面的なものとなりがちである。(pp.138-139)
散々ないわれようだなしかし。それと、この記述では「患者」がヘテロセクシュアルであることが前提となっているようだが、これは著者の「うっかり」によるものなのか、それとも実際にDSMにそう書いてあるのか(んなこたぁない(©タモリ)か)。
ところで、 DSM-IVにおけるパーソナリティ障害の項目を見ていて、「社会の心理学化」(樫村愛子=斎藤環)の議論を思い出した。
本書の解説を読んでいると、パーソナリティ障害の各タイプは戯画的なまでにステレオタイプな人格類型(ほとんど「キャラ」)である。そして各キャラの記述には、これもまた非常にステレオタイプな恨み辛みのようなものがただよってくる。アホみたいに類型的なキャラにアホみたいに類型的な恨み辛みが反撃する。
そもそも自分や他人の人格にステレオタイプなラベリングをもとめる心性自体に自己愛的な症候を見出すことができるように思う(一概にそれがわるいとはいえない。多かれ少なかれわれらみな自己愛的な神経症者なのかもしれないのだから(©ラカン)。よって「自分だけはちがうもん」なんて思っていませんョ)。「万人の万人にたいする戦い」の現代版(=万キャラの万キャラにたいする戦い)。