哲劇メモ

吉川浩満(@哲学の劇場)の日々の泡

可塑性のヘーゲル

ヘーゲルの未来―可塑性・時間性・弁証法

ヘーゲルの未来―可塑性・時間性・弁証法

ジャック・デリダの指導のもとで書かれた彼女の国家博士論文(提出されたのは1994年、出版されたのは1996年)。かなりの難物だが、巻末に収められた訳者の西山雄二氏の解説「カトリーヌ・マラブーが塑造する可塑性の未来のために」は非常に有益。


【目次】

日本語版への序文
謝辞
はしがき

序論

I 問題設定
   A)ヘーゲル哲学は「過去のもの」なのだろうか?
   B)可塑性の約束
II 可塑性の試練にかけられるヘーゲル哲学
   A)可塑性という概念の通常の意味
   B)ヘーゲルによる可塑性の思想
   C)弁証法と「予見=不測」
III ヘーゲルの二つの時間
   A)論理的区別化
   B)時系列(クロノロジー)的区別化
   C)思弁的論述と超越論的論述
IV 『精神哲学』の読解

第一部 ヘーゲルの人間、第二の自然の加工方法

序言
I 「人間学」の薄明
II 習慣のステータス
   A)実体-主体のギリシア的契機
   B)習慣、否定的なものの二重化の特殊様態
   C)可塑性
III道程

第一章 「人間学」通釈
I 「自然的な魂」、元素的な同等性という概念の契機
   A)「普遍的な魂」
   B)「自然的質」の特殊性
   C)個体的主体の個別性
   D)「直接的判断」あるいは「自然的変化」
II 「感覚」、「感情」、「自己感情」――判断の契機あるいは個別性の危機的試練
   A)感覚
   B)「感じる魂」
   C)直接性における「自己感情」――精神錯乱
III 習慣と〈自己〉の推論

第二章 ヌースの可塑性について――ヘーゲルによる『霊魂論』読解
I ヘーゲルによるヌース理解
   A)知性とその「存在様態」
   B)ヘーゲルの「誤解」
II 『霊魂論』第二巻――感覚
   A)論証手続きの呈示
   B)範例――習慣(ヘクシス)と人間(アントローポス)
III 『霊魂論』第三巻――思惟作用
   A)ヌースと否定性
   B)習慣と時間性
IV 結論

第三章 習慣と有機的な生物
I 習慣づけられた生命のさまざまな場
II 収縮とハビトゥス
III 収縮と「理論」
IV 変化の保存とエネルギーの反転可能性
V 動物的習慣と蓋然性なきその限界

第四章 問われる人間の固有性――可塑的個体
I 「内的なもの」と「外的なもの」――記号の自然的エコノミー
II 「魂の芸術作品」と意味のモンタージュ
   A)習慣と思考
   B)習慣と意志
III 偶有性の本質的生成
   A)可塑的個体性
   B)習慣の存在論的意義
結論

第二部 ヘーゲルの神、二重の本性の転回

序言
I 主体および主題とみなされた神
   A)歴史哲学的視点
   B)『エンチュクロペディー』の宗教的契機の特殊性
II 思弁的神学の批判
   A)束縛された神
   B)未来なき神
   C)存在-神学の成就
III 受動性から神の可塑性へ
IV 道程

第一章 「啓示された宗教」通釈
I 宗教の「概念」
   A)自己啓示
   B)表象の「諸領域」
II 純粋思惟の境位にある三位一体
III 被造物の例外的立場 世界と悪
IV 和解 〈啓示〉の三つの推論
   A)第一の〈啓示〉の推論
   B)第二の〈啓示〉の推論
   C)第三の〈啓示〉の推論
V 結論 祭祀における信仰から思惟へ

第二章 超越性なき神? ヘーゲルに抗する神学者たち
I 〈父〉の思弁的没落
   A)無化(ケノーシス)についてのヘーゲル的理解
   B)ヘーゲルの三位一体概念
II ヘーゲルによる信仰あるいは「概念的食欲」
   A)過激なルター主義?
   B)カール・バルトの応答
III 表象の運命 宗教の未来としての哲学的合理性
IV 不可能な未来

第三章 神の死と哲学の死――疎外化の二重の運命
I 「神自身が死んだ」――神という出来事
   A)『信仰と知』
   B)『精神現象学
   C)『宗教哲学講義』
II 「神自身が死んだ」「主体性の形而上学」の到来
   A)知と信仰の対立の新しい意味
   B)プロテスタンティズムの「苦痛の詩」としての哲学
   C)哲学の「空虚」
III 神の疎外化と近代的主体の疎外化の統一性
   A)表象
   B)神の可塑性に向けて

第四章 神の可塑性、あるいは出来事の転回
I 神の可塑性とは何か
   A)概念の正当性
   B)可塑性の助けを求める造形芸術 偶有性の本質的生成
II 啓示された時間
   A)「生命過程」
   B)有限性
   C)現象と世界
III 結論 神学と哲学の思弁的連関

結論
I 神と超越論的想像力
II ハイデガーによる時間の止揚(アウフヘーブンク)の読解
III 古代ギリシアと近代の十字架にかけられた神

第三部 ヘーゲルの哲学者、落下の二つの方法

序言
I 絶対知と形の贈与
II 述語的なものから思弁的なものへの移行
III 道程

第一章 「哲学」通釈
I 哲学という概念 再び見出された境位
II 哲学の判断 思弁的な形式と内容――芸術、宗教、哲学
III 哲学的推論――反省された後の自然
   A)第一の推論:論理、自然、精神――実習期間
   B)第二の推論:自然、精神、論理――学の出現
   C)第三の推論:精神、論理、自然――理念の離脱

第二章 弁証法的単純化
I 止揚(アウフヘーブンク)の可塑的取扱いのために
   A)力の一撃と悪無限のあいだの絶対知
   B)複数の保存と複数の抹消
   C)止揚(アウフヘーブンク)の過去と未来
II 単純化とその諸傾向
   A)概念的短縮
   B)切れ味の鈍い意味の尖端
   C)「梗概化された」加速作用
   D)要約された形式の諸様態
III 単純化は習慣的であると同時に無化的である
IV 結論 精神の滞留としての〈体系〉

第三章 「自発的に」
I 「〈自己〉の離脱」
   A)「哲学」の第三の推論への回帰
   B)止揚(アウフヘーブンク)と放棄
   C)「私」を欠いた総合
II 原因について
   A)〈自己〉とその自動運動
   B)偶然、必然、自由
   C)本質と偶有性の連関
III 結論 エネルギーの解放

第四章 哲学者と読者、思弁的命題
I (ヘーゲルとともに)ヘーゲルを読むことはできるのか
   A)思弁的解釈学のために
   B)いくつかの反論
   C)ヘーゲルの応答
II 言語と哲学――固有言語の空間と時間
III 思弁的命題
   A)述語への傾斜
   B)欠如した総合
   C)読解との関係における述語的なものから思弁的なものへの移行

結論
I 読解という出来事
   A)「私」、読者
   B)二つの威力
   C)構成と再構成
II ヘーゲルハイデガーを読む
III 予見=不測


参考文献
訳者あとがき カトリーヌ・マラブーが塑造する可塑性の未来のために
索引

◇未來社 - 書籍詳細
http://db1.dcube.co.jp/miraisha/search/fmpro?-db=miraisha_db.fmj&-lay=cgi&-format=detail.html&ISBN=4-624-01170-8&-max=1&-token=33758&-Find