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哲劇メモ

吉川浩満(@哲学の劇場)の日々の泡

鳥とUP

文学

久しぶりに鳥政の昼食。ミニ焼鳥丼とラーメンのセット(通称「ラーメン」)。

食べながら、書店でいただいた『UP』の頁をめくる。

美しい文章。チャールズ・サンダース・パースハンナ・アーレントルイ・アルチュセールにかんする3冊の伝記をとりあげ、「環境との不適合に苦しんだ知性の劇」(p.45)に思いをはせる。

身も蓋もないことを言ってしまうなら、結局わが日本の近代は、環境との悲劇的な軋みそのものを精神の運動のダイナモとすることによって世界に通じる「普遍的」な仕事を成し遂げた、こうした巨大な知性を所有していないというだけのことなのか。麗しい富士の麓に抱かれたこの国では環境はその住人を多かれ少なかれ親密に包みこみ、アインシュタインにも比べられる知性を餓死寸前まで追いつめもしない(パースの場合――引用者註)。秀才哲学者の精神を狂気で苛んでみずからの最愛の伴侶を絞め殺させたりもしない(アルチュセールの場合――引用者註)。ましてや亡命と国籍喪失といった残酷な流浪体験を強いることもない(アーレントの場合――引用者註)。そんな国に生まれたことの幸福を寿ぐべきなのだろうかと、わたしはときに思い屈しないでもない。(p.47)

と書く松浦氏。いろんな意味で泣かせる。

本エッセイでとりあげられた3冊の伝記は下記(それぞれ大冊)。

パースの生涯

パースの生涯

ハンナ・アーレント伝

ハンナ・アーレント伝

アルチュセール伝―思想の形成 1918‐1956

アルチュセール伝―思想の形成 1918‐1956

ちなみに松浦氏の作品でいちばん愛着があるのは下記(聞かれてないが)。

  • 松浦寿輝『表象と倒錯――エティエンヌ=ジュール・マレー』筑摩書房、2001
表象と倒錯―エティエンヌ=ジュール・マレー

表象と倒錯―エティエンヌ=ジュール・マレー