読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

哲劇メモ

吉川浩満(@哲学の劇場)の日々の泡

走り納め(未遂)

今日は今年の走り納めをしようと早起きをした。

風の冷たさが身体にこたえる季節だが、今年最後のライディングに気合いを入れ直し、Schottのライダーズ・ジャケットに身を包んだ。ガレージに眠るローライダーを外に連れ出す。朝の光に黒い車体が輝く。閑静な住宅地で早朝に爆音を響かせるわけにはいかないので、少し遠いが空き地の隣まで押していく。

そして一連の儀式。

右手で後ろ手にキーを差し込み、オンに回す。ヘッドライトとインジケーターランプが点灯する。左手でタンク下のフューエルコックをオンの位置に合わせる。透明のフューエルホースをガソリンが満たす。アルミビレットのスロットルを3回ひねり、ガスをホーリーのキャブレターに送り込む。ガソリンの香りが立ち込める。そしてセルスターターのスイッチを押す。ピニオンギアが飛び出し、フライホイールを回転させる。ギュウンギュウンギュウン……エンジンがかからない。気を取り直してもう一度。ギュウンギュウンギュウン……かからない。もう一度。ギュウンギュウン、カチ、カチ、カチ。何ということだ。チャージは万全だったはずなのだが。どうもバッテリーが死んでしまったようだ。

押しがけをする気力はない。ローライダーを押して戻り、ガレージに連れ戻す。気を取り直し、今度はFLHを連れ出す。ガレージを閉め、再び空き地へ。

そして再び一連の儀式。

FLHのバッテリーはしばらく放置していたので、セルスターターではエンジンがかからないだろう。しかしFLHならキックスターターがあるから安心だ。案の定セルスターターではかからなかった。気を取り直し、キックスタートに切り替える。キックアームに右足をかけ、全体重をかけて思い切り踏み込む。一回、二回、三回……四回目となる渾身のキックを振り下ろした瞬間、ライディングに持ち出そうと思っていた荷物がすべてローライダーのサドルバッグに入れたままになっていることを思い出してしまった。落胆。

最初にローライダーをガレージから連れ出してから、すでに30分以上が経過していた。もう気を取り直すことはできなかった。肩で息をしながらFLHを押して戻り、ガレージに連れ戻す。わたしはライダーズ・ジャケットを脱ぎ捨て、ふてくされて再び布団にもぐり込んだ。ベルクソンの『精神のエネルギー』を読んでいるうちに、再び眠りに落ちた。二度目の眠りは心地よいものだった。