哲劇メモ

吉川浩満(@哲学の劇場)の日々の泡

文学

多重映画脚本家 桂千穂

変態妖怪少年脚本家・桂千穂氏の新刊。 桂千穂『多重映画脚本家 桂千穂』北里宇一郎、北川れい子編、ワイズ出版、2005 多重映画脚本家 桂千穂作者: 桂千穂,北里宇一郎,北川れい子出版社/メーカー: ワイズ出版発売日: 2005/07メディア: 単行本 クリック: 5回…

ドストエフスキー氏のブログ「作家の日記」(*)

(*)実在しません(為念ほんとうに久しぶり――前回は学生時代だったから十年以上ぶりか?――に、「柔和な女」と「おかしな男の夢」を読んだ。前回は福武文庫版『ドストエフスキイ後期短篇集』の米川正夫訳、今回は下記の小沼文彦訳。 ドストエフスキー「柔和…

無神論月間(*)

(*)神無月(出雲を除く)。犬の鼻が冷たい季節がやってきた。 あせっても動けなかった。もう花も顔を近づけなくては見えなくなっていた。いきなり、つめたい濡れたものが頬にくっついた。ぎょっとすると犬の鼻だった。犬はすわっていて私にからだの重みを…

15の夜@バグダッド

イラク戦争時に湾岸戦争時の作品を読む。 加藤典洋「聖戦日記」(文明季評'91春)、『中央公論』文芸特集、中央公論社、1991 批評家・加藤典洋氏の創作である。初出時(1991年春)には素通りしてしまったのだが、ある方のご好意によって再会することになった…

いまごろ気がつくのはさておき

『小説トリッパー』秋季号の特集は「気がつけば韓流」。白眉は岩井志麻子氏のエッセイ。 岩井志麻子「時代がやっと私に追いついた」、『小説トリッパー』特集*気がつけば韓流、2005年秋季号、朝日新聞社 小説 TRIPPER (トリッパー) 2005年 秋季号出版社/メ…

第3回――内田魯庵

※「明治賢人研究会」は、武蔵野人文資源研究所の公式分科会です。あいかわらず内田魯庵「銀座と築地の憶出」。今日は5頁進んだ。 内田魯庵「銀座と築地の憶出」、『魯庵の明治』山口昌男、坪内祐三編、講談社文芸文庫、1997 魯庵の明治 (講談社文芸文庫)作者…

私はもうこれ以上の*は書かない。

※タイトルの「*」はワイルドカードの「*」です。『朝日新聞』の広告をボーッと眺めていたところ思わず瞠目。 私はもうこれ以上の信長は書かない。 作者の津本陽氏のお言葉。宣伝文には、「名著『下天は夢か』から十六年。ついに明かされる信長、最後の野望…

茶話

話し出すと止まらない。それが茶話。読み出すと止まらない。それが『茶話』。 薄田泣菫『茶話』岩波文庫 茶話 (岩波文庫)作者: 薄田泣菫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1998/07/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (13件) を見…

第2回――内田魯庵(再)

※「明治賢人研究会」は、武蔵野人文資源研究所の公式分科会です。 内田魯庵「銀座と築地の憶出」、『魯庵の明治』山口昌男、坪内祐三編、講談社文芸文庫、1997 魯庵の明治 (講談社文芸文庫)作者: 内田魯庵,坪内祐三出版社/メーカー: 講談社発売日: 1997/05/0…

『デカルトの密室』 etc.

文学関連の新刊・近刊情報。 瀬名秀明『デカルトの密室』新潮社、2005 デカルトの密室作者: 瀬名秀明出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/08/30メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (105件) を見る 「発達し過ぎたAIは、人間と同様に自由…

談話談話も仕事のうち

今日は原稿準備の一環として友人に話を聞きにいく。 *-*先日聴こうと思ったらHDDから消失していたパティ・スミス。グレン・グールドとともに領域横断的に消失している事実に一瞬とまどったのだが、気をとりなおしてレンタルショップで借りてきた。今日はこれ…

老母草

先日、地元の市が運営する中央図書館に足を運んだ。図書館は、バブルのころに建立されたとおぼしき巨大な文化施設のなかにある。その建物には、図書館のほかにもレストランや各種イベントホールなどが入っており、講演会や展示会などのほか、小さな映画祭が…

生きているのはひまつぶし

「深沢七郎」という文字を目にするたびに、また、「フカザワシチロー」(*1)という音を人から聞いたり自ら発したりするたびに、自動的にわたしの頬はゆるんでしまう。それが言祝ぐべき事柄なのか、はたまた憂慮すべき事態なのかはよくわからないのだが、と…

タイムスリップの断崖で(第6回)

出てからかなり経っているのだが、今日ようやくチェックできた。 絓秀実「「革命無罪」から「愛国無罪」へ――「東風」計測の新・尺度」、『en-taxi』2005年夏号(第10号)、扶桑社 enーtaxi 第10号 (ODAIBA MOOK)作者: 柳美里出版社/メーカー: 扶桑社発売日: …

在日ヲロシヤ人

星野智幸『在日オロシヤ人の悲劇』講談社、2005 在日ヲロシヤ人の悲劇作者: 星野智幸出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/06/18メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (25件) を見る 信頼する読み手から激賞されて読まない手があろうか。◇星…

第1回――内田魯庵

※「明治賢人研究会」は、武蔵野人文資源研究所の公式分科会です。 内田魯庵「銀座と築地の憶出」、『魯庵の明治』山口昌男、坪内祐三編、講談社文芸文庫、1997 魯庵の明治 (講談社文芸文庫)作者: 内田魯庵,坪内祐三出版社/メーカー: 講談社発売日: 1997/05/0…

犬描写、第三の大家

先日、わたしは次のような記事を書いた。 ※敬愛する大西巨人氏のひそみにならい(いつもどおり内容には大きな落差があるが、形式だけを見習って)、以下に長々と引用する。 ◇哲劇メモ > [文学][マ][メモ] みそつかす(2005年7月19日)腹が立ってしかたがない…

ABC@六本木

元同僚(現友人)と六本木で昼飯。そのときに立ち寄った青山ブックセンターで購入した新刊3冊。 ジョルジョ・アガンベン『バートルビー――偶然性について』高桑和巳訳、月曜社、2005 バートルビー―偶然性について [附]ハーマン・メルヴィル『バートルビー』…

杉浦日向子さん死去

杉浦日向子さんが死去http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050725-00000011-yom-soci江戸情緒豊かな漫画やエッセーで知られた江戸風俗研究家の杉浦日向子(すぎうら・ひなこ)さんが22日午前4時32分、下いん頭がんのため千葉県柏市内の病院で死去した…

セパレータ問題

ほんとどーでもいいことですが。id:june_tさんがずっとフェイスマークと思っていらっしゃったという拙ブログにおける「*-*」。 june_t 『ここのところずっと気になっていたのが「*-*」でした。フェイスマークかと思ったのですが、さっきRSS見てわかりました…

みそつかす

腹が立ってしかたがないので(上記エントリー参照)、気分を鎮めようと幸田文を読んでみる(仕事は?)。書棚からとりだしたのは、ご存じ『みそっかす』。 幸田文『みそっかす』岩波文庫、1983 みそっかす (岩波文庫 緑 104-1)作者: 幸田文出版社/メーカー: …

文学的なるものと人間的なるもの

今日届いた本。 白楽晴『白楽晴評論選集 I――「文学的なるものと人間的なるもの」その他』李順愛編訳・解説、同時代社、1992 白楽晴『白楽晴評論選集 II――D・H・ロレンス研究を中心として』李順愛編訳・解説、同時代社、1993 白楽晴(ペクナクチョン)評論選集…

プルーストと在日

上野千鶴子、鈴木道彦「対談 プルーストと〈在日〉のあいだ」、『青春と読書』2005年5月号、集英社 いまさら5月号の話もないだろうということかもしれないが、昨日部屋を片付け中にたまたま発見し、読みふけってしまった。プルースト『失われた時を求めて』…

失語の一歩手前でふみとどまろうとする意志

講談社文芸文庫から『石原吉郎詩文集』が刊行された。 石原吉郎『石原吉郎詩文集』講談社文芸文庫、2005 石原吉郎詩文集 (講談社文芸文庫)作者: 石原吉郎,佐々木幹郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/06/11メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 26回この商…

ヰタ、イタ。言フ、言ウ。

講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見15 笑いの源泉』講談社文芸文庫、2003堀田善衞「ルイス・カトウ・カトウ君」正宗白鳥「狸の腹鼓」 戦後短篇小説再発見15 笑いの源泉 (講談社文芸文庫)作者: 清水良典,講談社文芸文庫出版社/メーカー: 講談社発売日: 200…

文芸誌、総合誌

今日もの凄い勢いで立ち読みした雑誌記事を数点。 『新潮』2005年7月号、新潮社 蓮實重彦「「赤」の誘惑――フィクションをめぐるソウルでの考察」 本年5月にソウルで開催された第2回「世界文学フォーラム」において読み上げられた英文テキストの日本語訳。「…

ああ、バートルビーよ。ああ、人間とは。

月曜社より、ジョルジョ・アガンベンのバートルビー論が刊行される(7月中旬)。 『バートルビー――偶然性について [附:ハーマン・メルヴィル『バートルビー』]』 ジョルジョ・アガンベン著 高桑和巳訳 月曜社 定価(本体2400円+税) 46並製カバー装208ペ…

出版社PR誌

すべてをチェックしているわけではないが... 手にしたもののうちでおもしろく読んだ記事を。 『一冊の本』2005年6月号、朝日新聞社 島田雅彦「ロングインタビュー――快楽とともに二十二年」 橋本治「《行雲流水録48》 話すことと書くこと」 酒井順子「私は美…

Donna Donna

翻訳とブックガイド。 *-*久しぶりにジョーン・バエズを聴く。1960年リリースのデビュー盤。「ドナドナ」も収録。 Joan Baez, Joan Baez, Vanguard, 1960 Joan Baez 1アーティスト: Joan Baez出版社/メーカー: Vanguard Records発売日: 2001/08/14メディア: …

名短篇

『名短篇――新潮創刊一〇〇周年記念 通巻一二〇〇号記念』SHINCHOムック、2005名短篇―新潮創刊一〇〇周年記念 通巻一二〇〇号記念 (SHINCHOムック)作者: 荒川洋治出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2004/12メディア: ムック購入: 1人 クリック: 42回この商品を…